[2013.12.07]連続セミナー『教育と刃物』7
上へ上へと追われるように津波から逃げた人々の避難所になったのは、伊里前湾を見下ろす歌津中学校。雪の舞う寒さと迫りくる宵闇の中、家族とはぐれ家をなくした人たちはカーテンを外して体に巻き、身を寄せ合い、あるいは明かりと暖を求めてたき火を焚いて輪を作りました。
想像もつかない重い空気が漂う中、小野寺さんはあきらめてその場に座り込んだりすることなく、手と体を動かし続けました。そして、「箸もコップもないんではわがんねえ(ダメだ)」と、命をつなぐためのもの──食べものを体にいれる箸やコップを作り始めます。目の前には錆びたナタと、仲間の所有する竹林。極限状況での物づくりが始まりました。
死者・行方不明者800人を超える甚大な被害を受けたこの南三陸町歌津は、古代から続く古い歴史を持つ地域。刃物はもちろんのこと、さまざまな道具を自らの手で作り、大切に整え、使いこなすことが、今も人々の暮らしの原点になっています。
日常・非常時を問わず、何かを生み出すために欠かせないのが道具ですが、小野寺さんたちの行動を見ると、物づくりは単なる「物づくり」に留まらず、自分を取り戻し、人を癒し、仲間をつくるという生きる力の根源、あるいは人間がそもそも持つ本能だといえそうです。
震災前の歌津の様子、小野寺さんが営むワカメ養殖業、そして巨大津波が歌津を襲う貴重なビデオなどとともに、物づくりの本質に迫ります。 なお、今回のコーディネーターは、RQ市民災害救援センターの活動を引き継ぎ、被災地での聞き書き活動を続けるRQ聞き書きプロジェクト代表・久村美穂さんです。
◎小野寺弘司さん「歌津に生きる」(RQ聞き書きプロジェクト「自分史」公開サイト) http://kikigaki.rq-center.jp/jibunshi/kj-onodera/
◎聞き書きプロジェクト"MEMOKKO" 「生活必需品のない津波直後を手作り食器で乗り切る」 http://kikigaki-pj-memokko.blogspot.jp/2013/09/blog-post.html
【facebook】に「教育と刃物」の特設ページがあります。
[第7回目ゲストスピーカー]
小野寺弘司氏
【おのでら・ひろし】 1946年3月25日、宮城県南三陸町歌津伊里前生まれ。幼いころから山と海に囲まれた伊里前の自然環境のなか、のびのびと育つ。中学卒業と同時に漁師となり、マグロ・サケ・マス等日本の遠洋漁業の黄金期を経験。1978年、父の逝去を契機に実家を継ぎ、養殖漁業へと転身。その傍ら、地域のリーダーとして、伊里前契約会の会長、三嶋神社氏子代表を歴任。2011年東日本大震災に遭い、家と漁船、漁の道具一式を津波に流されるが、いち早くワカメの養殖を再開。翌年には高品質なワカメを市場に出す。現在も早朝から海に出る生活を続け、自ら育てるワカメを「目の中に入れても痛くないほど可愛い」と語る。その決断力と行動力を誰もが認める67歳。
[刃物クラフト講師]
関根秀樹氏(和光大学非常勤講師/原始技術史)
【せきね・ひでき】1960年生まれ。和光大学や桑沢デザイン研究所などの非常勤講師。古代発火技術や民族楽器の実践研究で知られ、パプアやアフリカの狩猟採集民の火起こし名人たちと競争して勝ったり、ネイティブアメリカンの長老たちに火起こしをレクチャーしたこともある。刃物に関する造詣も深く、古代の石器や日本の鍛冶技術を含む民俗刃物に通じる。各地で木や竹のものづくりワークショップを開催。主な著書に『縄文人になる!』(山と渓谷社)、『刃物大全』(共著・ワールドフォトプレス)、『新版 民族楽器をつくる』(創和出版)など。
クラフトではクロモジの爪楊枝作りを行います。お菓子つき。※写真はイメージです。
[開催日程]
12月7日(土)
◆第一部 初心者向け教室「クロモジの楊枝」
14:00~15:20
◆第二部 トークセミナー『3.11避難所での物づくり』
15:30~17:30
[会 場]
日本エコツーリズムセンター (地図)
[参加費]
各回/1500円(6回券割引/8000円)
第1部(クラフト)のみ大人1,000円/子ども500円
南三陸町歌津中学校避難所では、避難所にあったわずかな道具を使って竹で食器をつくっていました。そんな津波直後の食器制作の様子を、歌津の漁師さん、小野寺弘司さんにお願いして再現していただきました。
[全12回スケジュール]
第1回 |
人類と刃物──考古学・文明学・身体科学の視点から2013年6月28日(金)19:00~21:00講師:関根秀樹氏 |
第2回 |
銃刀法の現状とその影響2013年7月26日(金)19:00~21:00講師:服部夏生氏 |
第3回 |
子供と刃物──肥後守(ひごのかみ)で鉛筆を削る学校2013年8月30日(金)19:00~21:00講師:鹿熊勤氏 |
第4回 |
子供と刃物── 冒険遊び場プレーパークでの刃物の役割2013年9月27日(金)19:00~21:00講師:天野秀昭氏 |
第5回 |
子供と刃物──子供と刃物──ナイフメーカーの脳育教育の取り組み2013年10月24日(木)19:00~21:00講師:ビクトリノックス・ジャパン株式会社 田中麻美子代表取締役 |
第6回 |
子供と刃物──山村留学のこどもが言いました。「刃物は生活のタカラモノ」2013年11月22日(金)19:00~21:00講師:グリーンウッド自然学校理事 佐藤陽平氏 |
第7回 |
3.11避難所での物づくり~刃物のチカラ~2013年12月7日(土)14:00~17:30講師:小野寺弘司氏 |
第8回 |
狩猟とナイフ──自然教育ソフトとしての解体技術2014年1月30日(木)19:00~21:00講師:森のたね代表 井戸直樹氏 |
第9回 |
スカウティングと刃物──世界最大の青少年野外活動組織とナイフ2014年2月28日(金)19:00~21:00講師:佐久間宣吉氏 |
第10回 |
森の匠の刃物講座2014年3月28日(金)19:00~21:00講師:佃正壽氏 |
第11回 |
野遊びと刃物 ──ガキ大将キャンプで30年間ナイフを与え続けて2014年4月25日(金)19:00~21:00講師:アドベンチャー集団!Do 代表 黛徳男氏 |
第12回 |
最終回 教育と刃物──刃物づくりの現場と総括(仮)2014年5月29日(木)19:00~21:00講師:自然系ライター 鹿熊勤氏 |
今回の体験は、お茶会などに使われる高級爪楊枝になる材「クロモジ」を使用して楊枝づくりを行いました。削るたびに柑橘系のよい香りがします。
100%蕨粉を使用した蕨餅を、完成したての爪楊枝を使用して食べました。自分で作った爪楊枝で食べる蕨餅は格別です。
被災した直後、何もない中で「ないなら自分たちで作ろう」と知恵を出し合って作ったという食器づくりを体験しました。「モノづくり」を通じて、避難所に「一致団結して生き残ろう」という雰囲気がうまれましたが、ほかの避難所では、物資の取り合いや、諍いが絶えなかったことを教えてくれました。
被災者のヒアリング(聞き書き)を今なお続けている久村さんと、小野寺さんのお話しは、災害大国日本でどうやって災害と共に生きていったらよいか、その中での道具(刃物)の役割と必要かを教えていただきました。貴重なお話をありがとうございました。
[コーディネーター]
久村美穂氏(RQ聞き書きプロジェクト)
山中俊幸氏 |
雑誌・書籍・新聞・WEBの編集・記事制作、企業広告・商品広告の制作を行う広報のプロ。エコツアーや環境関連情報を発信するウェブサイト上の情報を一覧できる「エコツアー・ドット・ジェイピー」の制作者。
[株式会社クールインク代表/日本エコツーリズムセンター副代表理事] |
鹿熊勤氏 |
1960年生まれ。アウトドアや農林水産業、日本の伝統技術などの分野で取材を続けるライター。野鍛冶を訪ね、地域の特徴的な刃物や技術を記録。訪ねた鍛冶屋は全都道府県計140軒を超える。近年は教育と文化の視点から刃物に関する提言を続ける。著書に『日本鍛冶紀行』『はたらく刃物』(ワールドフォトプレス刊)など。日本エコツーリズムセンター理事。
[フリーランスライター/日本エコツーリズムセンター理事] |
★連続セミナー『教育と刃物』★
第7回 3.11避難所での物づくり~刃物のチカラ~
【ゲストスピーカー】小野寺弘司氏
【コーディネーター】久村美穂氏(RQ聞き書きプロジェクト)・山中俊幸氏・鹿熊勤氏
【日時】2013年12月7日(土)
◆第一部 初心者向けクラフト教室「クロモジの楊枝」
14:00~15:20
◆第二部 トークセミナー『.11避難所での物づくり ~刃物のチカラ~ 』
15:30~17:30
★「刃物のミニ博物館」も臨時開設!
【参加費】1,500円(飲み物・自作クラフト作品のお土産つき)
1部のみ参加 大人1,000円 子ども500円
【協力・後援】ビクトリノックス・ジャパン株式会社
【協力】ワールドフォトプレス『ナイフマガジン』編集部
【場所】日本エコツーリズムセンター
東京都荒川区西日暮里5-38-5 日能研ビル6F
【お問い合わせ】日本エコツーリズムセンター
TEL:03-5834-7966 FAX:03-5834-7972
【お申込み】下記のお申込みフォームまたは電話、ファックスでお名前、メールアドレス、ご連絡先電話番号を日本エコツーリズムセンター事務局にお知らせください。