[2008.06.06]
エコセンは新たな組織のカタチを模索していきたい。
日本エコツーリズムセンターの執行部が基本的にすべてを決めて動かし、メンバーは名前を連ねているだけ、という組織にはしないように、年4回メンバーが自主的に集まり、組織と活動の基本方針を議論し、ビジョンをつくるという運営を目指しています。コンセプトワークはそうした場のことです。
第4回目となるコンセプトワークは、2008年6月6日、エコセンの世話人とオブザーバー23名が参加して開催されました。
※下記内容は参加者の自由な発言をそのまま掲載したものであり、事実関係の検証は行っておりません。掲載の目的は、自由な発言の場としてコンセプトワークが開かれていることを示すためのものであり、その内容は日本エコツーリズムセンターの総意を示すものではありません。また、個々の内容についてのお問い合わせはお受けできません。
海野義明 [(特)オーシャンファミリー海洋自然体験センター 代表理事/
(特)海に学ぶ体験活動協議会 代表理事]
木邑優子 [グレイスアカデミー]
国安俊夫 [小田急電鉄(株) 法務・環境統括室プロジェクトマネジャー]
小林 毅 [岐阜県立森林文化アカデミー 教授/(株)自然教育研究センター 顧問/
日本インタープリテーション協会 代表]
嵯峨創平 [(特)環境文化のための対話研究所 代表]
坂元英俊 [阿蘇地域振興デザインセンター 事務局長]
佐々木豊志[くりこま高原自然学校 代表]
佐藤初雄 [国際自然大学校 代表]
高木幹夫 [(株)日能研 代表取締役]
高山 傑 [(特)エコロッジ協会 代表理事]
中澤朋代 [松本大学総合経営学部観光ホスピタリティ学科 専任講師]
長与純三 [シニア旅行カウンセラーズ 代表理事/元日本エコツーリズム協会 事務局長]
西田真哉 [トヨタ白川郷自然學校 校長]
三好直子 [環境教育指導者]
森 高一 [(株)アーバン・コミュケーションズ 環境プロデューサー]
山口久臣 [野外教育研究所IOE 所長]
広瀬敏通 [(特)日本エコツーリズムセンター 代表理事/ホールアース自然学校 代表]
山中俊幸 [(特)日本エコツーリズムセンター 事務局長/エコツアー・ドット・ジェイピー 編集人]
中垣真紀子[(特)日本エコツーリズムセンター 事務局次長/エコツーリズム・コーディネーター]
吉田 香 [エコツアー・ドット・ジェイピー編集部]
尾引美代 [エコツアー・ドット・ジェイピー編集部]
梶間陽一 [オブザバー]
小泉慎吾 [オブザーバー] 以上23名
『使い方』とは何かというと、例えば世話人にとってエコセンはどう使えるのか、地域にとってどう使えるのか、限界集落と言われるような所にとっては何か使い道があるのか。
●何事も対象者を考えることは大切。どこに焦点をおくべきか。
●いま使っているところと、徐々に使い始める人たちから考えていくのはどうか。
●あるいは、参加する側とか、協力する側とか、指導する側とか。
●主体的にではないけど、自分たちが関われるという方法。
●NGOもあるのではないか? そういう人たちをどのように巻き込んでいくか。
●今のエコセンの使い方というよりも、これからのエコセンの使い方を開拓していくのがエコセンのやるべきことだと思うので、こんな風に使ってほしいというのを考えた方が良いのかもしれない。
●例えば企業が地元社会に何らかの形で貢献したいと求めていて、そのアイディアをエコセンに聞きに来る。エコセンが対象地域や地域NPOだけを紹介しても、企業にとって(その地域やNPOの活動が)求めているものに適合しているかというと、隔たりがある。やはりコーディネート的な機能が必要になる。
●私はまだエコセンの活動を呑みこめていない部分があるが、(エコツアー)産業の底上げに重点を置くのか、トップランナー的なところを引っ張っていくのかが見えてこない。それが分かっていれば、使い方が見えてくるのではないか?
●エコセンはまだ形は決まっていないので、360度方向に顔を向けている状態。それで手の届くところから活動している。
●地域を元気にするってのはお金が動くようにすることでもあるので、産業の底上げは確かに重要。
●これまでに、やるべきこととして限界集落の話も出た。例えば、エコツーリズムという言葉でも阿蘇や富士山周辺では有名な名詞だが、全国各地の限界集落では全然知らない。その地域自体もまた無名。地元行政からも政府からも見放されているような場所にこそ、日本人の失ってはいけないもの、日本のアイデンティティというかDNAがあるのではないか。それが今消えていこうとしている。誰もその本質的な問題について手を出していない中で、エコセンがその役割を果たせないか、と思っている。過疎地、中山間地の持っている純日本的なもの、DNAを永遠に失う前にエコツーリズムの資源に抽出していこうと考えている。そこにエコセンの使い方があるんじゃないか。
●日本原住民ですよね。
●四万十川の源流部でを自転車で下った時、いくつもの限界集落を通り過ぎた。僕らの限界集落のイメージは活力のない寂れたものだったけど、実際に通り過ぎた集落はごみひとつ落ちてなく庭もきれいに手入れされて、田んぼの畦も花が咲き乱れていた。それが限界集落と呼ばれている村の本当の姿。そこはグローバル経済に犯されていないことで、地域の起承転結がまだ何とか機能している。言い方を変えれば限界集落には我々がとっくに捨ててきてしまったものがたくさん残っている。
●エコセンの5年後の見通しを立てるのは難しいが、戦略的に考えるひとつのキーワードとしては、有名どころのエコツアーではなく、例えば「限界集落PR隊・応援隊」など、限界集落を訪ね歩くツアーをエコセンがやる。これはある意味、危機的な状況を戦略の中に入れ込むと、そこには企業も行政も乗り易い部分がある。社会的にも文化的にも危機的状況にある限界集落を当面のテーマに据えて、限界集落を実際に訪ね歩きながら、限界集落の魅力を掘り起こしていく。とりあえず3年間は有名でないところ、目もくれられないような地域を、エコセンはPRし、なにか困っている要因があるならそれを明らかにする。そういう戦略的な活動をしていくと、実は違った形での成果が生まれるのではないか。
●本当に限界な地域は「限界集落」とよばれたくない。限界集落という言葉に反発をもつ地域はたくさんある。
●今あるところに提案している事業で、限界集落同士が手をつないで、自分たちこそが日本原住民なんだという、自分たちの持っている誇りを発信するのをエコセンがお手伝いしようと考えている。
●それは誰に対して発信したいんですか?
●日本社会に対してです。世話人の福井隆さんが「上流社会」っていう言葉を提唱している。川の上流は限界集落。いまの社会は下流(都市)だけ存在を主張していて誰も上流のことをしらない。
●日本の自分たちの原風景やふるさとをイメージできるのが40代以上しかいないのではないかという懸念です。今の若い人や都市に何十年も暮らした人は故郷意識が希薄。これは国家を形成する上でも危機だと思っている。そんな意図から限界集落を我々の意識的な故郷しようと考えた。
●エコツアーって元々そこの文化とか歴史とかを含んだものを見にいくことで、結果、地元が繋がっていく効果が知られている。そのなかで価値観の見方がある。
●「限界集落」の言葉と置き換えて「古道を訪ねるとか、上流社会を訪ねる」というのは。
●環境省のまとめたレッドデータブックの地域社会版。言葉は失礼だけどまさにレッドデータとしての限界集落をリスト化して訪ねる。
●データ的には、国交省で「限界集落」と規定されているのが7800箇所。そのうち消滅する可能性のあるところが2600か所ほどある。いまの限界集落の多くは江戸時代や中世から続いてきている集落だと思われる。だからぼくの歩いた範囲では、古道やしっかりした石垣、歴史のある古民家が残っている土地が大半。
●昔、「過疎の作り方は簡単だ。道を作ればいい。」という言葉を聞いてものすごく印象的だった。道さえ作ってしまえば、人が出て行ってしまう。
●人は出入りが少ないので助けあって生きる。でも人が流動化したとたん、集落は壊れていく。過疎地の条件は新しい道路ができることなんです。
●ちょっと気をつけなければいけないのは、50%が高齢者だとしても、少数ながら子どもたちもいる。高齢者の人で昔ながらの家・暮らし・生活スタイルを守りたいという人も確かにいて、エコツアーなどで訪ねたときに歓迎してくれる。ただ同じ村に住んでいる子持ちのお母さんやサラリーマンはこの集落を変えたいと思っている人もいる。その辺りで摩擦が生まれる可能性がある。
●地元がどうなりたいと思っているかどうかをきちんと調べておかないといけない。
●現状ではツアーとしての魅力の乏しい地域でも、いろんな人に来てほしいという気持ちのある土地にはエコセンがサポートする。そういうサポートを企業がCSRでやる。地域性のあるところならば行政がサポートする。そういう情報をまずは集める。
●阿蘇地域にもたくさんある。このまま放っておいたら廃れていくが、いろんな人たちを訪ね歩くと「何かしたい」という気持ちがやっぱりある。何かしていきたいという気持ちの中に、自分たちが育てた花を外部の人が「きれいですね」というと、そこで自分たちの持っている誇りを取り戻すことがある。自分たちの誇りをどれだけ言えるようにするか、案内ができるようにしてその場を広げていくんですね。その時に中には拒む人もいるけど、来てほしいって人もいるわけで、食べるとか歩き回るとか泊まるとかいろんな仕組みができあがっていく。そういうプロセスで地域全体がひとつになる。だから、そういうことをやりたい人たちにどれくらいエコセンが関わっていけるか。
●世話人は各地をまわって、限界集落に変わる言葉を考える!
●自然村という言葉もある。民俗学用語です。自然発生的な言葉ですね。エコセンではどういう言葉を使うかを考えなきゃいけないですね。
●地元の人で元気になる、地元のよさに気づきを持つプログラムが必要。
●エコツーは価値作りだと思う。
●地元学を尺度にして、地元学が動く所からエコツーリズムのカタチでセンターが広めていくというのもありますよね。
●エコツーが入って単なる金儲けになることだけは気をつけたい。お金に結び付けてしまうと地域の文化が壊れてしまう。
●われわれはどういう価値観で生きていくか。街の価値は効率重視や金、モノの豊かさだが、田舎の価値の基準は違っていたはず。それがあいまいな状態になってきた。きれいな空気とのどかな時間を求めて田舎暮らしをした人が、お金や仕事がなくて行き詰る。田舎の価値をもう一度、目に見えるカタチにして、その存在を出していくことが大事だ。
●西洋型のエコではなくて、エコを通じて日本の文化的な転換につながるものを。
●状況把握として、自分たちがやっている議論はもっと煮詰めなければいけないが、一方で上流社会・古代社会・限界集落がどんどん消えていっている。そのスピードを踏まえた上でタイミングを失わずにアクションを起こさなければいけない。
海野義明
木邑優子
国安俊夫
小林 毅
嵯峨創平
坂元英俊
佐々木豊志
佐藤初雄
高木幹夫
高山 傑
中澤朋代
長与純三
西田真哉
三好直子
森 高一
山口久臣
広瀬敏通
中垣真紀子